ロンドン・ヒースロー空港の忘れられたターミナル
イギリスの空の旅の玄関口といえば、国内最大規模のロンドン・ヒースロー空港。イギリスに旅したことがなくてもこの空港名は耳にしたことがある人は多いだろう。5つのターミナルを誇るヒースロー空港だが、実は同空港には長いこと不使用となっているターミナルがあるのをご存知だろうか。
記事ソース:MyLondonとMailOnLine
半世紀近くにわたってイギリスのハブだったロンドン・ヒースロー空港
非常に便利であると同時に、苛立たせるほど複雑でもある交通ハブ、ロンドン・ヒースロー空港(以下、ヒースロー空港)。毎年数千万人の利用客がいるといわれるが、パンデミック以前の2019年の利用者数は8千万人を超えていたというから驚きだ。
イギリスにやってくる人もイギリスから他の国へ旅立つ人も、航空券を買えば自分がどのターミナルを利用するかは確認しても、他のターミナルのことはあまり気にしないかもしれない。
ヒースロー空港にはターミナルが1から5まである。故エリザベス2世によって1969年に正式に開港したターミナル1は、当時の西ヨーロッパでは最大規模の空港だった。長きにわたり戦後のグローバリズムの巨力な象徴として存在していたと言っても過言ではないだろう。
90年代初頭のターミナル1は、急増する最新鋭航空機に対応するために新しい桟橋を導入。また、国際旅行の急速な進化に伴い、2005年には出発ラウンジを拡張し売店や飲食スペースを増設するなど、さらなる拡張工事が行われた。しかし最終的にはテクノロジーの進化に追いつけなくなったのだろう。開港から46年目の2015年6月29日、午後9時30分発ドイツ・フランクフルト行きの英国航空のフライトを最後に、一般の乗客は足を踏み入れることができない状態が続いている。
とはいえ多くの利用者にとって閉鎖は大きな驚きではなかったかもしれない。2008年に新設されたターミナル5には最新鋭航空機と大量の乗客流入に対応できる設備が整っている上、ターミナル3と4の発着便が増加したことで、いろいろな面で少し時代遅れとなってしまったターミナル1を維持するよりも、ターミナル2を拡張・改良する方が理にかなっていたからだ。
現在のターミナル1の姿
(イメージ)
閉鎖後の写真を見ると、レトロな小売店の看板やスロットマシーンなどが写っているが、これらを含めターミナル1にあったほとんどの備品は2018年の4月にオークションに出された。中には防犯カメラや待合所とゲートの座席、「Welcome to Heathrow」の看板などもあったそうだ。
現在のターミナル1では、「安全と避難経路確保のため、目的にかなう状態での維持管理」が続けられているという。空の旅をする利用者はいなくとも、武装警察などのさまざまな緊急サービス機関の訓練に使用され、常時、最大200人があらゆる事態のシナリオを想定した訓練に参加している。
ヒースロー空港の他のターミナルはというと、2025年初頭に数十億ポンド規模の改修と拡張計画が発表された。これには新滑走路の建設の他、ターミナル2と5の収容能力増強、空港全体のレイアウト変更、長距離バスの接続改善などが含まれる。
これからもますます近代化を続けるヒースロー空港に期待したい!